生と死を旋回する金魚 0
昨日は暗くなってからケータイの電源を入れた。
静かに過ごしたかった。気の利いたことが言えるでもなく、文字は打てても口はあんまり饒舌でないし。だけど、そろそろ来るかな、あるいはかけようかなと思う人がいた。
案の定、お決まりの時刻に、その人から電話が入った。
東京の競馬仲間、否、ナリタブライアン教の信者とでもいおうか。そう、わたしたちナリタブライアンを今でも慕うファンは、もはや「ナリタブライアン教」の熱心な信者なんだとむしろ誇らしく思う。
昨日は暗くなってからケータイの電源を入れた。
静かに過ごしたかった。気の利いたことが言えるでもなく、文字は打てても口はあんまり饒舌でないし。だけど、そろそろ来るかな、あるいはかけようかなと思う人がいた。
案の定、お決まりの時刻に、その人から電話が入った。
東京の競馬仲間、否、ナリタブライアン教の信者とでもいおうか。そう、わたしたちナリタブライアンを今でも慕うファンは、もはや「ナリタブライアン教」の熱心な信者なんだとむしろ誇らしく思う。
ここ数日、ずっと考えていた。
「わたしはビワタケヒデが本当にきちんと大好きだろうか?」
競馬仲間に聞かれたら「アホか!」と笑い飛ばすような愚問とストレートに思えるはずなのだけど、それでももう一度真剣に自問自答していた。
タケヒデに会ったのは、彼が屈腱炎を患い、種牡馬としてスタッドインしたCBスタッドが最初で、それは全兄・ナリタブライアンが死んで間もなくのことだった。
ナリタブライアンに魅せられて競馬の底なし沼に溺れていったわたし。ナリタブライアンの全弟は1995年生まれのビワタケヒデ・1997年生まれのビワタイテイの2頭がいる。3頭いたはずのパシフィカス×ブライアンズタイムの牡馬で存命しているのはタケヒデだけ。
さしもの愚鈍なわたしも、ブライアンズタイムとナリタブライアンの共通してもつ雰囲気には驚愕させられるほどだった。ナリタブライアンの死後、放牧地にたたずむブライアンズタイムを見て、心臓が止まるような思いをした。
ブライアンズタイムとビワタケヒデはそれほど似ているとは思わないけれど、ナリタブライアンとビワタケヒデはよく似ている。おデコの白、鼻にかかる白、やや細身で優美な肢体、繊細そうな、高貴な部分は酷似していた。
しばらくはタケヒデを見るとギクッとして、胸が痛み、上品な顔と向き合えばブライアンを投影して泣いてしまうことをやっぱり泣いて詫びていた。
どことなく贖罪を感じていた。