〜long as grass grows,water runs

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ナリタブライアンが昇って17年

Posted on 07/10/2015 18:55 by なわでいず

振り返ると何年もエントリしていないんだなあ…
ナリタブライアンの命日にはお参りを欠かしていない。

2015/09/27/新冠ナリタブライアン墓碑

2015/09/27/新冠ナリタブライアン墓碑

今年は前日の夜には静内に入り、翌朝は余裕をもって新冠へ向かった。
前夜22時をまわったあたりから、静内はぐんと冷え込み、冷たい雨が窓を打っていた。
天気予報は地域によっては一週間の長雨で、新冠も夜まで雨マークがなくならない。

9月27日は晴れの特異日だと言えそうなほど、毎年晴れてきた。
数年前に一度、降っている年があった。そのときもお昼ころには奇跡的に雨がやんで、墓前にファンが揃うときには青空がのぞいた。牧草地が雨露に光ってとてもきれいで。
どんな予報も覆して雨雲はなんらかの力で押しとどめられ、わたしたちの前で墓石は秋の陽光に光った。

 

 

そろそろ神通力も…という気持ちが、折りたたみ傘を1本だけ携行させて、
終わりなんてありはしないのだという気持ちが、折りたたみ傘の携行を隠させた。
すこしでも降ったら日課の散歩は行かずにおまえたちと温泉へ行く、という静内のおとうさんと呼ぶ人へ「自信ないけど毎年だから…」と言っておいた。

9月27日5時。夜が明けようという時間、空はどんより重たい雲が覆う隙間から青空が顔をのぞかせている。
さすがだなあ。
ちなみに前夜わたしたちに付き合い酔いつぶれたおとうさんは、張り切る息子を連れ立ち具合悪そうに散歩へ出て行った。

2015/09/27/新冠温泉レ・コードの湯で咲いていた花

2015/09/27/新冠温泉レ・コードの湯で咲いていた花

 

 

6時前に一度、ひとりで新冠へ向かい、レ・コードの湯で朝湯を楽しんで、支度を整えてから出直した10時半ころには、低い気温を一気に上げる勢いの強い陽光が射していた。

 

 

 

 

 

 

 

今年も新冠の生花店でお花を買う。17年間変わらず、白ばかりを集めた。定番のトルコキキョウ、カサブランカにガーベラ、マム、菊などなど。大輪の白菊に紫色の菊やピンクのスプレーカーネーションをあわせたお花をパシフィカスへ。

去年からは、道東の寒さで有名な地域からいらしている方と連絡を取りつつ現地集合している。
同胞の彼とは17年間ここで会っては会釈をする程度。その背中だけをずっと知っていた。
ナリタブライアン記念館が閉館するときに館長さんを通じてご挨拶をして、いまはLINEでたまに近況を報告しあっている。

同胞の背中は、いつもわたしだった。
ひとりぽつんと記念館のブライアンがまとった馬具や携行具に囲まれ、ぐっと頭をたれて背中をまるめていた。
その表情が手に取るようにわかる。背中が、泣いていた。
ブライアンの思い出に包まれ、わたしたちの思い出を積むナリタブライアン記念館が閉館するまで、変わらなかった。

どれほど経ってもあの日のことはつらい。

ひとしきり泣いてからかつてのCBスタッド場長とナリタブライアンの生前の話を幾度も繰り返しては、また目を真っ赤にしてきた自分とシンクロした。

2015/09/27/新冠ナリタブライアン墓碑01

2015/09/27/新冠ナリタブライアン墓碑01

 

 

優駿記念館到着。
やや淡い青空は高い。

同胞は先に着いて、お墓の掃除をしてくれていた。
りんごやにんじん、お花、お供物がずらりと並んでいる。

ブライアン、今年も来てるね。

 

 

 

 

2015/09/27/新冠にて鹿5頭横断中

2015/09/27/新冠にて鹿5頭横断中

 

昨夜からあれだけ降って、今朝は温泉へ向かう道中濡れた木々、露を含む花々(そして道路に飛び出す鹿5頭。2頭が立ち止まっていたので車はPに入れて待ったら戸惑いながらもう3頭がおどおどと駆け抜けていった)を見たのに、もはやほとんど乾いている陽光といえば、想像がつくだろうか。

 

 

 

 

 

 

スタリオンが周辺の掃除刈り(草刈り)をしてくださっていて、あたりはおおよそきれい。
墓石に掘られた文字に細かな草くずなどが入り込んできれいにとれないというので、洗車ブラシや歯ブラシ、ウォッシャー液や雑巾を持ち出していっしょに磨く。

2015/09/27/新冠パシフィカス墓碑

2015/09/27/新冠パシフィカス墓碑

ブライアンをきれいにしてから、パシフィカスのお墓もきれいに磨く。いずれの彫刻文字も一部の黒がかすれて墓石の地色がみえている。これはどう直せるのか、道具はホムセンで買えるだろうか、いずれにせよ来年にはきれいにしたいねと話す。
早田さんが建立して、倒産のごたごたに巻き込まれて、お墓の土地の所有者となった優駿からへの移動を迫られ、そのために必要な大金を出してくださった方がいて、わたしたちファンがここへ参れる。
せめて維持だけは手伝わせてもらいたい。

いまできるかぎりはきれいにした両者のお墓に、お花を供えて、ひざをついて手をあわせる。
何も考えなくても自動的に左脳の片隅から記憶が流れていく感覚は毎年のこと。
あまり仔どもたちとは会えていないけれども、彼らの無事の活躍を見守っていてほしい。

そして自身の報告。
生後5ヶ月のときから毎年来ている息子は11歳、今月末で一緒に女湯に入れなくなるんだ。
今春からは乗馬をはじめたの。へたっぴだと笑ってやりたいのだけど、遅れて始めたわたしはもっとへたで…親子で同じことに取り組んで話せることは楽しくて、生活に馬が関わっているのが幸せで、乗るごとに牛歩でも上達していくのがわかるととびきりうれしくって。
あなたにまたがると、さぞ天にも昇るような心地だったのだろうなあと、つくづく思うよ。
その選ばれしアスリートは、調教師としていまもご活躍で、相変わらず楽しくって律儀で真剣にファンサービスへの思いを上へ訴え続ける熱さを持ちつづけてくださっているんだ。素晴らしい方だよね。さすがだよ…

お墓を囲み、穏やかな笑顔で会話が始まる。

もう17年繰り返してきた。
この日、わたしたちは、金魚になる。
金魚というのは記憶が30秒しかもたないので、狭い水槽をぐるぐる泳いでいられるのだそうだ。
同じことを幾度も繰り返し、時に笑い、時に目を真っ赤にしながら、自身のハイライトシーンを語り合う。
年月を経て、涙の頻度は下がり、ブライアンを囲む同窓会の様相をなし、参加者は減り、けれども集う者同士の結束はむしろ強まっている。
ここで過ごす9月27日そのものが、ブライアンからのギフトなのだと思う。

同胞もまったく同じ心境だという。そんな予感がしていたから、わたしはブログに綴るくらいがせいぜいの、人が聞いたら狂気にも受け取られかねない心情を明かすことができた。

悲しくないわけがない反面、前向きな意味で、彼はいなくなったのではない、という気がしていること。

どこへいってもブライアンは見つけられない反面、彼の血脈を追いかけて行くどこの競馬場でも、見上げる空に彼がたしかにいること。

そう言ってしまうと辻褄の合う出来事が必ず起きること。雨の予報を覆してしまうのも、産駒が怪我なくよいレースを見せてくれること、17年も経ってもなお、彼の話ができる人とのご縁を授かっていることも。

同胞は期待に違わず、そして話してくれた自身の思いのたけもまた、わたしと合致していた。

この日ばかりは空をゆっくりと見上げるのだという。
いまは、かつてブライアンのお墓があった、旧CBスタッドの丘の上と、やさしいカナリヤイエローの塗装が施されていた厩舎と。
この時期に咲く紫の野花たちが、ブライアンのナリタの勝負服を思わせ、自然までもが彼を振り返っているかのように感じられる。
そんな話を真顔でして、涙もろいコンビ危険水域の表情をつき合わせていて、吹き出して。

2015/09/27/新冠栗の木

2015/09/27/新冠栗の木

 

遅れてきた人も加わって、お向かいでランチをいただく。
待っている間も、大きな窓から向いのお墓を見てしまうのは、だれもがいっしょ。
ススキの穂を揺らす秋風が強い陽光をさわやかに抜けていく新冠の地でブライアンを思いおいしいものをいただきながら談笑する。
この時間のいとおしさ。

 

 

 

 

 

2015/09/27/新冠元ナリタブライアン記念館石碑

2015/09/27/新冠元ナリタブライアン記念館石碑

 

お店を出て、ふたたびお墓へ戻り、記念館裏の石碑を訪ねる。
ここにナリタブライアンの魂はないのだけれども、お花屋さんからの配達はここへ届くようになったのは、伝達によるものなんだろうという。
もう、ナリタブライアンを知らない人たちが、たっくさんいる。

 

 

 

 

 

この石碑の右隣の広い放牧地は、数年前にはマーベラスクラウンがいた。

2015/09/27/新冠優駿記念館マヤノトップガン

2015/09/27/新冠優駿記念館マヤノトップガン

 

 

いまはマヤノトップガンがのんびりと草を食んでいる。彼も23歳、おっとり眠たげな表情と変わらぬ黄味の強い栗毛が陽を受けてまばゆく金色に輝いている。

ライバルと呼ばれた1歳ちがいのブライアンズタイム産駒の激闘を思うと、なんとも不思議な気持ち。

 

 

 

 

今朝、おとうさんと「初」のつく名馬たちの話題になって、かつての海外遠征した最初の日本馬は地方馬だった、という話になって、「もう神話だよな」と笑った。その表現に大笑いした。

ナリタブライアンも伝説であり、その強さは神話にもなろう。
ただの伝聞でない、生きた証人として、わたしたちはナリタブライアンを語り継いでいく義務を負っている。
「知ってる!シャドーロールの怪物、でしょ?」
だれもがそう言ってくれるほどの、有馬記念のもうたまらんと4角前でマクっていった彼のように、永久に鮮烈に。

傾きかけたやさしい西日がパシフィカスのお墓を照らす。おだやかで仔どもたちへ継がせたまあるい瞳の美しい牝馬を思う。
あなたの宝は、わたしたちにも変わらず宝です。ありがとうございます。

5年ほど前は現地の海岸で夕焼けを待ってあわてて高速に乗ったところ、あの…つまるところゴールド免許が授与されない歴を延長することになり…

2015/09/27/ウトナイ湖にて白鳥

2015/09/27/ウトナイ湖にて白鳥

 

はやめに出て、定番のウトナイ湖に寄り道しながら、そしてあちこちで随時空を見上げながら、はじまりかけた渋滞をのんびりと帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

2015/09/27/千歳市内にて2015年の9月27日の夕日

2015/09/27/千歳市内にて2015年の9月27日の夕日

 

 

千歳で渋滞に巻き込まれることを幸いに見られた夕日は、今年も美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

2015/09/27/ウトナイ湖にてわきに咲いていた花

2015/09/27/ウトナイ湖にてわきに咲いていた花

 

 

ありがとう。
いま、穏やかに過ごしていてくれることを、いまも祈りつづけてる。

ナリタブライアン、1998年9月27日没。享年7歳。

いまもわたしたちの目にはだんだんと年老いて、24歳にしては若々しく、背中のラインが年相応にやや垂れてきた彼が、映る。

 

 

 

10月に入り朝夕は10度を切る寒さとおみそ汁大好きな息子のため(落ちにくくなる脂肪対策の口実かも)毎朝おみそ汁をたべる生活5日め。食費はいいものをポイントづかいでやりくりしたいなあ。


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