〜long as grass grows,water runs

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土葬されていたナリタブライアンの最後のお墓参り

Posted on 29/10/2011 06:45 by なわでいず

エントリの順番間違っていてすみません。

2011年9月27日、ナリタブライアンが天へ駆けて13年が経った日も、新冠は晴れた。先のエントリにて記載しているとおり、ナリタブライアンは下へ移動したので、これが最後の「元CBスタッドの丘の上に眠るナリタブライアン」の姿になる。

 

110927_ナリタブライアンのお墓

110927_ナリタブライアンのお墓

周囲の草がきれいに刈られているのを、ご覧いただけるだろうか。これは、優駿スタリオンステーション(以下優駿SS)の場長さんが、ご厚意でしてくださっていたこと。

放牧地でも採草地でもない、ただのだだっ広い、ナリタブライアンのお墓の背景は、このアングルから5歩も引くと、わたしの胸まで届く高さの雑草が生い茂っている。たくさんの種馬を預っていらっしゃるところ、こんなにも広く、掃除刈りをしてくださっていた。

場長さんのご厚意と、敬意。とてもありがたい。

 

 

 

あんまりメルマガが届くので、ポイント消費にプチプラなニットを頼んでみた。もう上質な素材を長く着るのはかえってもったいなく思えてきた。ワンシーズンなら洗濯にも耐えそうだし、普段着にはこれでじゅうぶんかなというシーズンアイテムが豊富。柄レギンスは、他店で買ったようなパンツ風を期待していたら、思いっきしジャージっぽいテカテカテロテロ素材で爆笑した。部屋着でも恥ずかしくてはけない。

 

110927_丘の上のブライアンのお墓掃除前

110927_丘の上のブライアンのお墓掃除前

着いたときは、こんなふうになっていた。

こざっぱりしていて、すっかりなじんでいて。この下に、ナリタブライアンは13年間、眠っていた。

9月27日、それはこの数年間、いつの9月27日でも、わたしたちはまず持ち寄った道具で、墓所に生えた雑草を除ける作業をはじめた。ワンピースでも、背中丸出しのローライズでも、高そうなパンツでも、ナリタブライアンのなきがらの上にいると思うと、とても足を着けられなかった名残で、気持ちだけと爪先と膝を地面について雑草を抜き、墓石に持ち寄った水をかけ、スポンジやタオルでこすり、鳥のフンに笑いながら、幾度も「もう●●年も経ったんだね」と微笑んで、繰り返す。

変わったことといえば、我が息子が手伝いに参加できる年齢に達してきたことくらい。

 

「不変」を崇拝して、畏れた。変わらないことが何より素晴らしいと思ってきた。けれどもそれはときに足枷になる。責められないうつろいはたくさんある。自分だけは変わりたくないと、多くを変わってきた。ダブルスタンダードに苛まれながらも、13年間変わらない思いが、ここにはある。

 

 

 

110927_丘の上の墓所_w800h533

110927_丘の上の墓所_w800h533

上の写真の左後方からの眺めは、こんなかんじ。ずっと下へ向かい、幾枚もの放牧地が通路を挟んで向かい合っている。そこにはかつて、ブライアンズタイムやサンシャインフォーエヴァー、ビワタケヒデ、エムアイブラン、シルクジャスティスたちがいて、ときにスギノハヤカゼが休養にきていたこともあった。

去年までいた威勢のいい芦毛は、昨夏旅立ち、いまはマヤノトップガン、キングヘイロー、カネヒキリ、アドマイヤオーラたちが暮らしている。

アドマイヤオーラは今年60頭あまりに種付をしていた。

 

 

 

 

110927_優駿メモリアルパーク_オグリキャップ像

110927_優駿メモリアルパーク_オグリキャップ像

優駿SSのすぐ下にある、元ナリタブライアン記念館の前の空き地は、こんなきれいな優駿メモリアルパークとして今夏からオープンした。

オグリキャップの像は金色に輝いていて、生きていたころの強烈なインパクトまでも具現化されたかのよう。次々と来客になでられる様子に、この大きな一時代を築き上げた名馬がどれほど愛されたかを知らされる。

この写真の右側には、優駿SSで活躍してきた名種牡馬たちのお墓が並んでいる。

 

 

110927_優駿メモリアルパークオグリキャップ石碑

110927_優駿メモリアルパークオグリキャップ石碑

銅像建立のため競馬場など各所にポスターの貼られていたオグリキャップ。石碑は、写真をプリントしたとても立派なもの。芦毛によく似合う、淡いグレーの石。彼への敬意と、これから南井さんつながりの三冠馬な後輩をよろしくお願いしますという気持ちをこめて、花を手向け、手をあわせた。

以前もブログに記していたのだが、ふと気になり、新冠生花店で「ナリタブライアンの他に、今もお花を贈られる馬はいますか?」と尋ねたことがある。

お店の方がぱっと浮かんだ馬は、ホワイトストーンと、オグリキャップだった。昭和から平成に遷移する時代を駆けた彼を今も応援する方々がいらっしゃることは、同じ競馬ファンとしてとてもうれしい。

 

札幌のこじゃれたお花屋さんならば、もっといろんな種類のお花を盛り込んだアレンジメントフラワーを用意できる。けれど、地域経済への貢献、ナリタブライアンの故郷へのささやかな気持ちを込めて、わたしは新冠でお花を買うようにしている。静内の馬ならば静内で買う。

 

 

 

 

110927_オグリキャップ記念館のモニュメント、ブライアンの功績

110927_オグリキャップ記念館のモニュメント、ブライアンの功績

いまは、記念館の前に一般道に面した「優駿メモリアルパーク」があり、そちらから入場できるようになっているが、「ナリタブライアン記念館」だったときは、横手のCBスタッド(現優駿SS)の駐車場側に、記念館への入り口があった。その入口から入ると、ナリタブライアンの勝利の数だけ、大きな壁のようなモニュメントが建っており、ひとつひとつに勝利レースのレース名、年月日、勝ち時計などが刻印されたプレートが据えられている。

そのプレートは変わらず、横に「オグリキャップの記念品を展示しています」という張り紙。よりによって阪神大賞典。よりにもよってマイルG1馬の展示品の案内が。

せつない。

 

でも、はがされてしまったら、たぶんもっとせつない。

 

 

 

110927_記念館にあるナリタブライアンの石碑

110927_記念館にあるナリタブライアンの石碑

記念館の中には、もう、ひとつもナリタブライアンを思い出させるものはない。

すべてがナリタブライアンだった「ナリタブライアン記念館」の展示品が置かれていたガラス棚は、「優駿記念館」に名を変え、オグリキャップの展示品で満たされていた。ナリタブライアンよりも年月を感じさせる色あせたレイ、表彰状、病に倒れたときにたくさん贈られたという千羽鶴、涙の出るようなあたたかなメッセージの数々。

サラブレッド銀座に入ってすぐ右手にあった優駿SSで見たときには、あんなにも胸を熱くしたのだけど。

場所が、わたしたちには、複雑すぎて。

記念館裏手の、かつてナリタブライアンの放牧地だった場所にある、ナリタブライアンの石碑は、変わっていない。

オープン当初は、訪れると白い石を手渡された。だれもがナリタブライアンへのメッセージを書き込んで、石碑へ捧げた。3,000円払えば小さなプレートを手前の大きなモニュメントのまわりに、1万円で石碑の裏に、自分で描くものを刻印したプレートを入れることができた。記念館に所蔵品を寄付して名を刻印されている人、1万円を払った人、2つ入れたわたし。色あせたメッセージを必死に解読したりと思い思いに眺めて歩く。もう、前の年から何も変わらないのに、何度も見る。変わっていないことをたしかめるため、変わっていない自分を確認するためなのだろうか。

 

 

1996年_CBスタッドにて_ナリタブライアン

1996年_CBスタッドにて_ナリタブライアン

丘の上にあったお墓を訪ねるために歩く道は、かつてナリタブライアンが曳かれた道。

1996年、引退式を控えて乗り運動をしていたナリタブライアンに会わせていただきにうかがった。それがはじめての対面だった。この写真がそのときのもの。大事な宝物は、2年ももたず遺影となった。

十数名が集まっていたと記憶している。小さな馬場で軽く乗られていたナリタブライアンを前に、誰一人として声を発しなかった。

厩舎に戻る際、スタッフの方はわたしたちの前でブライアンを止めてくださった。抵抗するでもなく、鞍上の思うがままにじっと立ち止まり、こちらへ顔を向けてくれるナリタブライアン。圧倒されるオーラを放ちながら、親しみやすい顔立ち。やっぱり声が出なかった。

この写真を撮ったのは、もう15年も前のこと。そして、亡くなってから13年、お墓に通って12年が経ち、合間には生家も終の住処も追われ、孤高の名馬は、この秋、母と再会を果たした。

 

ビワハヤヒデとの兄弟対決が実現していたら、どんなに競馬場が密集地帯になっただろうなぁ。

ヒシアマゾンとの仔が見たかったなぁ。

パシフィカスのこと、なんて呼ぶんだろうなぁ。「ママ」だったら爆笑するわー。呼びそうだからイヤだなー。

こみ上げるものをこらえて、軽口を叩き笑い合える仲間と出逢わせてくれた。三冠馬という希有な存在を知った。サラブレッドの脆さとはかなさを教わった。死はいつ訪れるかわからないことまで押しつけて、仔どもたちを観にいろんな競馬場へいざなわれて、本気で応援する馬のいるクラシックの高揚感を味わわせてくれて、こんなに涙が出ることを知らしめられて、ブライアンの面影を辿る道のりには、いつも仲間というブライアンからのギフトがあって。

 

ビワタケヒデの報告は任せてたもれ。フンっ(荒い鼻息)

兄ちゃんと弟、妹たちを見守っていてください。子孫たちをドキドキしながら、空から見守っていてください。

 

朽ちた肉、残された骨、蹄跡、血。ほうぼうに散らばったピースを、ずっと追いかけていきます。

 

崇拝する不変とは、ナリタブライアンそのものなのだろう。

 

 

同志の側面を持つ方であるかの方へ、反省と畏敬の念を込めて。


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