芦毛の女神 – エイシンバーリン 1
彼女・レーヴディソールのウサギみたいな顔立ちとレースぶりにときめいて、思い出す馬がいた。
芦毛はとくに好きな毛色ではないわたしに珍しく、これでもかと好きだった馬がいる。
エイシンバーリン。
不思議なご縁があるもので、彼女のすごい功績のひとつ、芝1200mで1分7秒台の壁を日本で初めて突き破った記録は、つい先日会ってきたアグネスワールドに破られている。だけど淀の芝1200mはまだレコードホルダーだもん。
10月24日、彼女に会いにいってきた。
引退して2年後だっただろうか、最後に会ったのは。すでに真っ白くなっていたバーリンは、栄進牧場を出て、同じ浦河町内の別の牧場に移動していた。
すでに離乳も終わり、バーリンは3頭で一枚の放牧地に放されていた。「遠いから」と、引き手をつけて、バーリンを目の前まで連れてきてくださった。なんという光栄!ヒザを曲げるくらい腰を低くしてしまった。
バーリンは近づくとそばかすみたいな褐色の斑点まじりで、神々しいほどにまっ白。そして、すっかりおっ母ちゃん体型。スタートはイマイチながらも純然たるスプリンターだった面影がちょっと見当たらないくらい。彼女を包む雰囲気はとてもやさしくて、穏やかな顔をしている。
靴底の重力からうっすら逃れて、バーリンが競馬場を駆けていたあのころ、20代のころに戻ったような錯覚をおぼえる。