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映画「レ・ミゼラブル」Les Miserables 3度め – デラックス版サントラも発売決定

Posted on 06/02/2013 23:18 by なわでいず

映画「レ・ミゼラブル」は素晴らしい。Les Miserablesの楽曲はたいへん情感あふれる壮大な組曲のごとく名シーンとともに互いを讃えるように流れると、ものすごく好きになったのかもしれない。

LesMiserablesFilm提供のムービーはすごくよくまとまっているなと、映画を観たあとに思う。

ちょっと無理を押して「レ・ミゼラブル」を観てきた。3度目である。映画の日やレディスデーを避けたし、いつもの映画館は公開から日が経つとガラガラになるのだけれども、2月6日もなかなかの入りだった。行列をしない性分のくせにきっかり並び先頭をキープ、スクリーン最後尾の真ん中の席を確保。

これまでの2度は、シート群のおおよそ中央に走る大きな通路より前に着席している。一度目は息子と一緒だったこともあり、ふたりとも集中を欠かないよう、また万が一ご迷惑をおかけしないよう、スクリーンと自分の前になるべく人がいないことを望んでのこと。それと、上から観るとまた違うかな?と。音のボリュームがやや大きすぎるほどに感じられた前の席より遠くなり、視界にスクリーン全体が入った気がする。

こちらは即納品

さて、今回も箱ティッシュをバッグからちら見せのオサレ最先端で臨み、見事に…見事に…前回よりは消費はやや少なくなった。オープニングから涙だらだらにはならずにすんだためか、見逃している部分がたくさんあることも気づけた。泣きすぎては鑑賞に際しよろしくない。また観られてよかった。

 

ぐっとくるポイントは3度目でもむろん変わることはないが、より深く感じ入るところや見落としていた部分はあった。

※以下、ネタバレに終始してしまうので、お楽しみにとっておきたい方はそっとタブを閉じてください。

 

今回も抜粋で。。

ヴァルジャンとジャベールの掛け合いではヴァルジャンが「My sister’s child was close to death」と訴えている。パンを盗もうと考えるような死に近づくほどの餓え、そこにはガヴローシュが歌う「自由のために戦った国で、パンのために戦っている」がシンクロする。王制が復活して多くが貧困にあえいでいる。明日の晩餐に着る衣装に迷う階級の人たちがあたたかな部屋で過ごす夜、「Look Down」を唄う貧しい人たちは明日こそ食事ができることを寒さにうち震えながら星空へ祈っていたことを想起させ、ぐっとくる。

かろうじて工場の仕事を得られていたファンティーヌもまた、ギリギリのところにいた。些細なアクシデントで解雇された彼女が行き着く先は、堕ちるだけ堕ちた場所。コインで身を売る女性たちは、しかしながら生きるために必死だっただろう。髪と歯を売りくずおれるファンティーヌをLovely Ladiesを唄う女性たちが慰めてくれる。彼女たちにとっての救いはあるだろうか。大事な何かを放棄することで心は軽くなれただろうか。

前回は「エポニーヌ役のSamantha Barks好きすぎる」の大絶賛に注力しているが、作品として最初にピーク(わたしにとっては気を失いかねないほどの慟哭レベルを指す)を迎えるのが、本作にとってもそれともいえよう、初めて客を取らされコインを投げられたファンティーヌが唄う「I Dreamed A Dream」。邦題は「夢やぶれて」。

原作では19歳で妊娠しており、当時娘のコゼットは3歳なので、彼女はまだ22、23歳で、きれいな髪と歯を持つとても美しい女性なのだ。孤児院で育ち、15歳でパリに出てお針子仕事をしているときに出会った男性との子を宿している間に男性は去り、ひとり苦しい生活のなか、愛娘をテナルディエ家に預け仕事を求め出身地へ戻り、流浪の果てに身をやつした。短く刈り取られた髪(アン・ハサウェイは撮影時に本当に地毛を切り落としたそう!現在のショート姿もかわいいけれど、劇中では気の毒で姿が映るだけで泣ける)、汚れたドレスにつつんだ身体はフィジカルにもメンタルにも薄汚れ、女性として一縷の望みも断たれた地獄で嗚咽する歌。

同じメロディーで病院の清潔なベッドに横たえられたファンティーヌがか細く唄うシーンもどうしようもなく悲しい。遠く離れて暮らす愛娘の幻想に微笑み、いっぽうで自身の身の置かれた現実から旅立っているわけでもなく。妄想と現実、両極の世界が広がる細い平均台の上をふらふらと歩いているかのファンティーヌが、弱々しく幾度も娘の名を呼び、寒くはないかと心を添わせる。半透明のコゼットはきれいなドレスを着てにっこり笑っている。自分が彼女を追いつめたと胸を痛め、必ず娘を守ると約束するマドレーヌ市長(ヴァルジャン)。あたたかな言葉と胸にいだかれ、彼女は安堵して黄泉の旅へ出る。アン・ハサウェイはこの撮影のために7kgも体重を落としたという。その熱意やおおいに報われたと思う(と嗚咽しながら)。

娘に、会えなかったのだ。その悲しみの深さ、罪の重たさを、ヴァルジャンはしかと刻んだ。

※ここは原作と舞台が違うようで正直ずいぶんほっとしている。原作の方では、これだけ打ちひしがれたファンティーヌの前で、ようやくマドレーヌ市長を追いつめたジャベールはなおファンティーヌに「娘を呼び寄せようと言っているこの男はこれから投獄される犯罪者である」と言い放ち、夢を断たれたと思ったファンティーヌはショック死するというのだから。

また、このシーンの撮影時にはスタッフがみな泣いたともいわれている。舞台版と大きく異なる歌い方であることに両論あろうが、彼女がはじめても同然のわたしにとっては、ハサウェイの歌が「I Dreamed A Dream」のスタンダードとして深く刻まれた。次のアカデミー賞では助演女優賞にノミネートされており、日本の映画関連webサイト下馬評では全員が大本命のシルシを打っている。

 

町外れの薄暗い森でリトル・コゼットとヴァルジャンが初めて会うシーンもあらためて切ない。ファンティーヌが言われるがままに送金していたような病気ではないものの、コゼットは早くから預けられているテナルディエ一家の営む宿屋で女中として働かされており、テナルディエの同い年の娘とは天地の差の扱いを受けている。映画チケットやサウンドトラックに使用されているイラストは、原作のために描かれたコゼットなのだそうで、8歳にしてはやせて小柄なため6歳ほどに見える姿をしていると描写されている。映画のリトル・コゼットもひどく臆病そうで、幼くして現実をうつろに映す瞳。

何者かと木に隠れるコゼットから向けられる怯えたまなざしに、「マドモアゼル、名前を教えて。そのバケツを持とう」と大きな背(ヒューは身長189センチ!)をかがめて視線の高さをあわせ、帽子を脱ぐヴァルジャンのやさしい笑顔。大人に虐げられてきたコゼットがレディの扱いを受けたのだ。口角を上げたコゼット少女がいとおしい。

それまでのようにコゼットはヴァルジャンと歩いているときにも街のショーウインドウに飾られた綺麗なお人形に目をやる。ぼろ布を結んでつくった人形が彼女の唯一の友人みたいなものだった。ヴァルジャンはそれに気づき、テナルディエ夫妻からコゼットを奪還し二人で歩いている道すがら、かがんで彼女にきれいなお人形を差し出すのだ。これにも泣いた。

屈強な腕に抱かれる幼いコゼット。大人に抱き上げられる安心感、ぐーんと視線が高くなる経験を、おそらく彼女は初めてしたのだろう…

そして、すっかりヴァルジャンを父としてともに生きてゆくつもりであったであろう安堵しきったコゼットの髪をそっと撫で、ヴァルジャンはちょっときょとんとしているようにも見える表情で、コゼットを起こさない声量で「Suddenly」を唄う。

突然の出会い、こんなにも私を信頼しているこの子をすでにこんなにもいとおしく感じていること。ふたり寄り添って暮らしていこう。この私にも、幸福が訪れた。そう唄う。
ヴァルジャンは独身を貫いた。先のエントリにも記しているように、姉の子(字幕では最初は「姉」で後半は「妹」になってた気がするんだが)のためにパンを盗み、贖罪の気持ちあってでもファンティーヌの娘を守ると約束しただほどなのだから、子どもが好きなのかもしれない。正しい心を持ち、だれにも親切な人間となったヴァルジャンであったが、ことコゼットに対しては、実の娘にも加味される何かをもった深い愛情を注ぎつづけた。

だからラストシーンで、ファンティーヌに感謝されたヴァルジャンはコゼットを「宝だ」と唄う。

尻切れで恐縮なのだけど、今夜はここまでにしておく。じつは書き始めたのは3度目に映画館へ足を運んだ2月6日なのだが、更新するじっさいの日付は2013年2月19日。

4度目を観てきた夜である
そのためか打っていて落涙する頻度が高いのです。

 

【嬉しい情報】

すぐにもサウンドトラックが欲しいところだったのだが、不満もおおく手が出せずにいる。思えば168分(私の行く映画館計測値)のミュージカル映画挿入歌がCD1枚に収まるはずがない。どれも、聴きたいのだ。

これのデラックス版が3月20日頃に発売される予定となった。非常にうれしい。2013年2月19日現在で収録曲リストは掲載されていないが、ほとんどCDをつなげて「映像のない映画」になってしまうことを祈って。

↓Amazonでは予約受付中

わたしもグリーンの瞳にしてみたい


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