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高次脳機能障害と自閉症

Posted on 25/06/2012 23:30 by なわでいず

息子と同い年のお子さんが高次脳機能障害となったお母さんの記事を読んだ。知能検査の結果、1歳相当と判定された受傷後、支援学級への移動もスムーズでないご様子で、本当にお気の毒に感じていた。

あるとき、障害児の学童保育所を見学されたときのこと。

自閉症は一生治らない。障害児のまねをしたらどうしよう。我が子は成長が見込めると医師に言われている」といった旨が綴られており、いたたまれなくなった。自閉症児のお母さんともお友だちだとのことだったが、わたしならばまさかそんなこと思っているとは知りたくないだろう。

いちおう記しておくと、自閉症はそもそも「病気」ではなく「障害」であり、「完治」ということばじたいが当てはまらないから、言うことはある意味で間違っていない。

しかしながら治る治らない以前に、自閉症児は成長がぴたっと止まっているわけでもない。「遅滞」であり、定型発達児が日常生活でどんどん自然に身につけていく社会性の獲得が抜きん出て困難な子たち。それらを作為で具体的に示し刷り込むことで、予後のよい例はたくさんある。その点においては、近しいように捉えていたのだけどなぁ。

 

成人した高次脳機能障害をもつ方と交流をもつようになり、できるだけ正しい知識を得て付き合っていこうと努めてきた。なかには成人してから発達障害と診断されながら検査を続けたところ高次脳機能障害と判定された症例もあると知り、アスペルガーとAD/HDをもつ息子の親としては、ますます気になった。

正直、このところずいぶんと気落ちしていた。高次脳機能障害という疾患のむごさ、介護される方の凄惨な生活、そして当事者からの鳴り止まぬ電話。

「高次脳」とは、平たくいうと「人間たる理性的な部分をつかさどる」部分であり、そこがダメージを受けた状態…と、受傷された当事者家族の手記に記されていた。たびたび登場する「酷い」という言葉の重きがずしりと響いた。抑制がきかないというのは、我が子である程度はわきまえてきたつもりだったが。

いくつかの医療文献を読むと、そういった点で対人面が受傷前のように円滑にはいきがたい方が散見されたとおりなのだろう。友人も幾度伝えても、電話やメールを控えてほしい時間帯に連絡を入れてくる。仕事にも支障が出た。いさめるとふだんの饒舌なハイテンションぶりが潜み、「わかった」とは言うものの、どうしても繰り返してしまう。けれど放っておくことも難しい。家族を失い、これからの人生をどうしたらいいのだろうと途方に暮れているのだから。

知り合ったきっかけや、会ったときの出来事など、ずいぶんいろんなことを覚えていないことに、彼自身が傷ついている様子を何度も目の当たりにしたから、わたしが平素ふつうに働いて息子との生活を保っていることまでは理解してくれていることは、すごくうれしかった。たったそれだけのことにも見えるが、そこには

・わたしが社会人であり、ふたり分の生計を立てていること

・息子がいること(しかも名前も学年も!)

・平日は忙しくしていること

などなど、いくつもの「記憶」が刻まれていることを示唆している。高次脳機能障害は程度に大きな開きがある。スペクトラムに評価される自閉症と同じだ。健常者が平たく考えるところの『努力』だけではどうにもできないもどかしさが、両者にはある。社会復帰される方もいらっしゃる。一見して本当に健常者と疑われない彼は、しかしながら決して軽度ではないように見受けられる。熱心にリハビリに励んだ結果なのだろうと感嘆した。

だから、それでも「いまの携帯は(諸事情で)電源を切れないから7〜21時の間に連絡して」となんどもなんども伝えたことは、都度ちょっと抜けてしまうのか、はたまた抑止がきかないのか、いずれなのかはわからないけれど。「電源は切らないで、起こすから」の一点張りだった。

いっときは朝5時に「おはよう!起きた?」と電話(じっさいは5時まで携帯の電源を落としていたもので、「3時半に着信」なんてSMSが複数入っている)、6時過ぎ、7時過ぎにぞれぞれ「本当に起きたかなと思って」と電話、8時過ぎに「出勤した?」と電話。17時前後に「どうしてる?」(仕事中です…)、18時過ぎに「こんばんは!」で20時前後に「そろそろしゃべれる?」と電話が入っていた。同じことをすでに聞いていることをやんわり告げるといたくショックを受けていたことから、当人が傷つかないよう、何度でも相槌を打つことにした。一部は「もう何度も話したけど…」からはじまるので、こちらは抑止がきかないんだなと思えたし、そうでないことは記憶がないのだろうなと捉えていた。「いい脳のリハビリになるわ!」と言われると、多少は生活がタイトになるのも致し方ないと思えた。

これが自動電源オンのできないiPhoneに持ち替え、2時過ぎ、3時過ぎにかかってくるともなると、さすがに勘弁してくれと言わざるを得なくなった。メールもちょくちょく入る。内容はたいてい同じで、他愛もないとある同一のことか、人生設計も立たなくて困っている、のいずれか。5時間睡眠でこれがあると非常にキツい。親子でひどいカゼをひいたときには「ノドも痛いのでしばらく電話は休ませて」と頼んだら、今度はメール着信の嵐。返信できずにいると何度でも何時でも送信してきて、あげく空メールや「届いているかなー」というひとりごとにも見えるものも多々、合間には「治った?」と電話。心身ともに滅入ってしまった。

当事者家族の方から「自分のペースでの付き合いを」とご助言いただき、この問題をどうクリアしていくかを眠気のとれない頭で模索していたときに先述の記事。落ち込み、もう一度落ち込む。友人との付き合いは、対等だっただろうか。わたしこそ、高次脳機能障害と自閉症を比較していやしないか。より厳しいと思ったり、一方でいっときでも「健常者として暮らした日々」をもつことを、それでも羨ましく感じたりしてはいまいか。

どちらにもそれぞれの苦悩があって、今よりも少しでもよい明日を目指していることに、なんら変わりはないはず。

iPhoneやAndroid、iPadなどで使えるコミュニケーション補助アプリ「Voice4U」をはじめ、DSでもこのようなソフトがある。このショップではカードやヒーリングCDなど、自閉症児に役立ちそうなグッズを多く取り揃えている。

広汎性発達障害・自閉症スペクトラムにかぎらず、姿勢を維持するのが困難な子は少なくない。こういった補助器具がぽつりぽつりと市場に出ている。


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