デイリー杯2歳Sに跳んでる馬がいた
IPAT口座に200円しか残っていなかった。
てか、馬券そのものが欲しくない?
そんで、民放の中継じゃ放送しないパドックから観たくない?
うららかな秋空、自転車で札幌競馬場へ向かった。
いつもはご不在すら多い諭吉さんを複数人携えて。
デイリー杯2歳ステークスに、札幌でデビューしたレーヴディソールが出走する。悲しいことにレースは間に合わなかったけれど、リプレイでの笑える脚と、ウイナーズサークルでそのかわいらしさにすっかり見とれた。次走はただもらい♪と思っていた。
…だけど。
いざ出馬が確定すると、なんと紅一点。
パドックを見ると、モニタ越しでも、今日も変わらずめちゃくちゃかわいい。馬格がないわけじゃないけれど、がっしり身が入ってきたオトコ馬もいるものだから、ちょっと心配になってきた。レーヴディソールはやっぱりオンナのコなんだとつくづく感じる。しかも、あくまでおっとり。メンコは必要なのか疑問に思うほどのんびりして見える。まさかモテモテになりすぎるから顔を隠しているとか?こんな顔で前走もあんなにスパッといったんだもんなぁ。
マイネヴィータ(札幌新馬勝ち、札幌2歳S2着のナリタブライアン産駒。阪神JF、オークスにも出走しています)のパドックを思い出す。あの仔のデビュー戦のパドックは鮮烈だった。
生まれて初めてパドックに姿を現したマイネヴィータは、寝ていた。
こっちが不安と緊張でハゲそうなくらい、トロトロしていた。
だけど、さすがマイネル軍団、しかと鍛えられた肉体を駆って、彼女は芝1800メートルのデビュー戦を余裕で勝ってしまった。
あの仔は厩務員さんが「とっとこハム太郎みたいに瞳がくるくる」とおっしゃっていたっけ。
松田博資調教師のコメントとして、顔を褒め、ケイコでも「兄(レーヴドリアン)を抜かすんとちゃうか」といった記事が新聞に掲載されてた。
んー。
んー。
えっ。
デイリー杯って、14年も牝馬が勝ててなかったの?
最後に勝ったのは…シーキングザパール!
あの、海外遠征大反対だったことを大反省させられた!
(ヒシアマゾンのアメリカ遠征に心配だと本気で泣いた)
…アリだと思う。
つまるとこパドックって、何年見てもわたしには善し悪しがちっともわからない。あくまで好みでいく。坂路でいい時計を出したアドマイヤサガスは悪くなさそうではないか。おぉ、ごっちゃんの芦毛ちゃん。アドマイヤコジーン!(いつもそういう理由)人気でも切れないなぁメイショウナルト。コスモバルクの甥っ子とわかって意識していた青毛のエルウェーオージャはさすがにゴツゴツしているなと感じる。でっかい脚音を立てていそうな様子の馬も見当たるなか、レーヴディソールは足音がしていなさそうにも見えた。過去にそう感じた馬の1頭に、ファレノプシスがいる。しゃなりしゃなりと聞こえる気すらした。かわいくてかわいくてしょうがなかった、お姫様。やっぱり先入観、てか私見?
悩みに悩んで、自宅からマークしていったレーヴディソールの単勝に、当初の覚悟から半分以下に減らした金額を塗った。このごろ家電が順番に壊れるわ、クルマ的なアクシデントが立て続けだわで予定外の出費が多いのよ。生活壊すほど馬券買ったことなんかない。元々よくぞ競馬やってきたなってくらい賭け事がニガテ。クロフネが圧倒的人気の第2回JC砂(JCダートってなんかどうなのと思っていたので、個人的にJC砂とJC草と呼んでいた)で、府中まで応援に行ったウイングアローの単勝を泣きながら1万円買ってなかったか?あのときは独り身だったの。あ!今も独り身といえばそうだった。
いやそれはいい。前売りの 2.7倍からオッズはどんどん下がってくから、もはやそんなちっさい賭けすんな!ってレベルの単勝。連勝はアタマと決めてはいたから、1頭軸3連単流し馬券も空欄だっ た相手を3頭決めて書き入れて、息子にガンバレ馬券と、エルウェーオージャの複勝も100円だけ。
「ヴ」の発音が難しいのか、レーヴディソールの名をおぼえるのを放棄したか、本気で大きくて脚の速いウサギと間違えているのか、彼女を「ウサギちゃん」と呼ぶ息子。
札幌での思い出がよほど深いようで、日曜の夜にレーヴディソールがデイリー杯に登録していると知らせて以来、やたら張り切っていた。
そんな息子のほうが戦前からはっちゃけてしまい、スタンドの外に出て、芝生の前でレースを観ることにした。
やだこんな6歳児。
「おかあさん、もうさっぽろけいば、ないの?」
開催終了直後の札幌競馬場がキライだ。あまりに寂しい。もうすぐここは雪で埋まり、有馬記念のころには立ち入りできなくなる。じっと冬を耐えて迎える夏にたった2ヶ月だけ訪れるにぎわいを、10ヶ月も待つんだ。
紅葉がはじまっているとはいえ、コースの芝生はまだまだ青い。
あの仔、ここで走ったんだよなぁ。
中舘くんが味なレースしたんだよなぁ。
めっちゃかわいかったなぁ…
ぬおー、本馬場出てきたー!!写真を撮るとグレーが濃かったけれど、こう肉眼で見ると白いんだ。刺し毛が多いのかな。キャンター。これはよろしかろう!!やわらか。白鳥とのコラボがなんと優美な!!だから見るとこ違うて。
淀の外回りマイルなら、大外でいい…んだったよね?後入れもよろしい。お膳立てはそれなりにOK。ついでに、仮に負けてもオンナのコなんだからここは2着でもやむを得ないと自分に言い聞かせられるし、そう納得できる程度に減額した単勝馬券で、我ながら情けないほど小さな気に、そして財力にと保身も万全。
結果は、ここをご覧の方ならばおそらくほとんどご周知のとおり。
うあー兄ちゃんそっくりなもっさりスタート!!(ごめんなさい)
しかもユーイチなんで下げてんの!!作戦か?
うおー上がってった〜〜〜〜
ユーイチぃぃぃぃぃ、大外すぎんだろ!!!!!
息子:「うさちゃん、跳ねてる!」
ほ、ほんとだ。
ごっつい牡馬たちみーんな、ぴょーんと交わしちゃって先頭でゴール。
しまい流してなかった…?
末恐ろしい仔…!
レーヴディソールがゴール板を先頭で駆け抜けて、声も出なかった。息子の歓声だけが響く。ようやく口をきくことを許された(レース中しゃべるとゲンコツが待っている)息子が、開口一番「ウサギちゃん、ひとりだけぴょーんぴょーんって、ずるっこしたみたいだったね!」と笑った。
あ、そんなふうに見えるんだ。そうかもね。
みんなゆっくり安全運転してるのにね、追い越し車線からグイーンといっちゃったみたいだね。あはははは。
なんーとも胸のすく思い。
ほんっとに、気持ちいい。
こんなウサギみたいにかわいいコが、気持ちよく切れる。メイショウベルーガとはまた違うタイプの切れ味。
こんなすごいコと札幌で出会えたこと、無事にデイリー杯2歳Sへこぎ着けたこと。いろーんなことがうれしい。
こっそりと胸に秘めた思いが成就したこともまた、とてつもなくうれしい。
わたしの大好きな馬の株までも、もういっちょ上がってしまう特典もついてきちゃったんだ。
これは、ママが手にした主演女優賞のオスカー像へのノミネーション。
きっともう、札幌では会えないね。それは寂しくないといえばウソだけど。
(ん?札幌記念走ったブエナビスタと同厩?ってことは…いやいや過度な期待は…)
大舞台でも臆せず飛翔する、底の見えない大型新人女優。
遠く北国のスクリーンからでも桜の仁川に声援が届くまで、発声練習でもしておこう。
「ぴょーんと」飛翔するウサギちゃんに馳せる夢、第2章。
関連エントリ:「夢のような飛翔」