オグリキャップに最敬礼
ナリタブライアンのお墓参りにて、余談編。
お花屋さんから届けられたお花を供えに、場長さんが丘の上のブライアンのお墓へいらしてくださった。とても好い方。
お礼を伝え、生産者も仲間にいるので、生産現場の現状みたいな話題に移った。
「来ましたよ、2頭」 1頭目の馬名を聞くなりそわたしの顔はキラキラしてしまったようで、「下(馬房)にいるから、見てって」とおっしゃっていただいた。
かつてはナリタブライアンとブライアンズタイムがいて、わたしが訪れるようになってからはブライアンズタイムとビワタケヒデ、そしてナリタブライアンの残り香を繋養していた厩舎。
千羽鶴と、持ち主を失った頭絡が、がらんとした馬房に下げられていた。
この値段でクオリティ十分なプリントなので、ワタシ愛用中。
先ごろ亡くなったオグリキャップの馬房には、小さな祭壇が供えられていた。苦しむ間もなかったと聞く。わたしにとってはリアルタイムではなかったけれど、大きな一時代を彼らが築き上げてくれたからこそ、今のわたしがあるのだろう。何しろ、ナリタブライアンから競馬をはじめ、牧場見学をはじめて、すぐに見学にうかがったのがオグリキャップなのだ。競馬なんてまったく無関心だったころから唯一知っていたのが、まさにオグリキャップ。11年ほど前にツーショット写真を撮らせていただくというとんでもない栄誉にあずかった。14歳のオグリも気性が激しく、「危険を察したらすぐ逃げて」と言われた。
こちらにも花をお供えして、手をあわせた。
芦毛特有の病気についてうかがったばかり。オグリキャップもずいぶん前にそれに倒れ、一時はずいぶん心配されていた。現役時代にむき出しだった闘志でそれも克服して、数々の困難に打ち勝ってきた、名馬中の名馬。
ありがとうございました。あなたが府中に出向かれたとき、静岡の友人が駆けつけて、どうしようもなく泣いたそうです。あなたの現役時代を少しでも知ってほしいと、最後の有馬記念を中継した「スーパー競馬」の録画をわたしにくれました。
涙で声を詰まらせ、レース結果を読み上げられない鈴木淑子さん。泣きました。あなたがどれほど愛され、どれほどがんばり、そしてそれをリアルタイムで観られなかったことの悔しさに。
苦しみのない、南井のおっちゃんにブッ叩かれない世界で、好き放題に暴れるあなたを祈ります。
振り返るとお向かいに栗毛。馬栓棒にはネットも張られている。つまり、先ほどうかがったばかりの、気性的にアレだと言われていらした証拠でしょう‥‥‥ おデコの白に息をのんですぐさま涙ぐむわたしに、場長さんがネットをよけてくださり、青草で呼び寄せてまでくださった。
あ、あぁ、アドマイヤオーラ。
スタリオンではとても期待しているとおっしゃっていらした。
かわいいかわいいビワハイジの息子、すんごくがんばったハイジの息子。左の肩の出がよくないという。除外が2度もあった。ボロボロになってもがんばったんだね‥‥‥ブライアンに会ったあとは、ささくれて図太いはずの神経が素直になり、過敏で、涙もろい。
そのうち飽きてプイと後ろを向いた彼にも関わらず、どうやら泣きながらいろいろつぶやいていたようで、笑い声が耳に入ってきた。
恥ずかしいのでひとりその場を離れ、他の馬房を見に行った。うわぁ、きれいな栗毛。わー!!!カネヒキリ!!! ダートの雄と聞くと、がっしりして顔立ちもゴツいイメージを抱いていた。カネヒキリはつい先日まで激闘を繰り返してきたとは思えないほどに優美な立ち居振る舞い、それに似合わぬ連戦を物語るかの顔のキズ。あちこち毛がハゲちゃっているのは、砂をたくさん浴びたからなのだろうか。
彼はたぶん、もう走らなくていいことを知っている。おとなしいけれど、ものすごく強い生命力を感じる。
ひと目で骨抜き。
生きてこそ。そして、走ってこそ。落ち着いたばかりの涙腺が決壊した。あちこちへ出向いて、よく走ったね。爆弾を抱えて、よくがんばったね。立派だよ。素晴らしいです。ありがとう。お父さんになってもめっちゃがんばってください。なんだかもう意味不明なほど泣きじゃくった。
すぐそばには流星の青鹿毛。
物静かな彼を取り巻くなんともいえない雰囲気に引き寄せられ、ふらふらと近づいていった。
日に照らされる漆黒は、つやつやでとてもキレイ。
穏やかで、やさしく賢そうな顔をしている。
黒い!流星!かわいい!
(2006年菊花賞馬ソングオブウインドでした。わー!)
やばいステキなメンズにたくさんお会いしすぎた。
飲んでもないのに危険な精神状態。
「いやー、あの年の4強(妄想:ビワタケヒデ)の予定がちょっと遅れてしまったから3強に入れてほしいんだけど、いや、入れていいんだよね?てか入ってるもん!」と涙声で鼻息荒く誰ともなく話しかけ、指差す先で困っていたのはキングヘイロー。
アメリカの競馬雑誌の見出しに「SAYONARA,GoodbyeHalo」と書かせた、名牝グッバイヘイローと、凱旋門賞だけで虜になったダンシングブレーヴ様の血を紡ぐ名馬キングヘイロー。種牡馬としてコマンダーインチーフを超える活躍を果たしてみせますから!
CBスタッド時代からここに留まっているのはマーベラスサンデー。CBスタッド場長は彼を「マーベ」と呼び、馬栓棒をガジガジするサク癖をひどく気にしていた。マーベの馬房からささいな物音がするだけで身体をギクッとさせ、様子を見に駆けつけた。馬房が傷むだけならまだしも、疝痛が取り返しのつかないものになってしまうことを、痛いほど知っていたからなのかもしれない。
マーベはそれでも相変わらずのガジガジ君だった。ごめん、でもかわいい。まだまだこれから、ずっと応援しているよ。
金色の馬が放牧地から戻ってきた。マヤノトップガンだ。
現役時代の馬体重が信じられないくらい、トップガンはがっしりして見える。種馬の風格も十分。タニノギムレットに水をあけられちゃあ、泣くファンがたくさんいるよ!
我が息子は、4月23日が予定日だった。ぜんぜん生まれる気配がなく、こりゃビワタケヒデと同じ4月29日に出てきてもらって、タケヒデと名付けようと目論んだら、26日にうっかり生まれてしまった。タヤスツヨシとセイウンスカイが同じ誕生日なのだけど、やっぱりブライアンにちなんだ名をつけた。『無頼庵』とかじゃないよ。どういういきさつだったのか、そんな話をした。さすがにナリタブライアン仲間以外にはウケがよろしくなく、場長さんはガチで引いていらした。えー。
最後にもう一度、オグリキャップの馬房に手をあわせた。
季節柄、竣工は先のことになるだろうけれど、凝ったデザインのそれは立派なモニュメントを計画されているとうかがっている。
名馬にふさわしく、けれども願うのは、何よりそれが永久に動かされず、何年経っても思い出を風化させないファンがそこに集える場所であってほしいということ。
なきがらすら移動を迫られるナリタブライアンを愛するわたしたちは、一様にそう願った。
関連リンク:「12年」
晩夏から今秋もTommy Hilfigerばっか。好きですねと言われるけれど、袖丈が足りないから羽織りはヒルフィガーになっちゃうんだよ…
いや、好きなんだけど。MARK JACOBSも大好き。パーカ色あせてるくらいww